失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
搬送されてどこかの病院に着いた
頭のCTとレントゲンを撮り始める
僕の意識の反応が鈍いため
医師がナースに大きな声で指示する
バタバタしてる…僕のせいだな
検査室からどこかに移される
何か夢を見ているような
判全としない感じが
意識の全てを覆っている
医師は何か話し掛ける
身体は微かに反応するが
何を言われているのか
意味がわからないのが変だ
人の言葉を翻訳する頭の中の機械が
壊れてしまったみたいな
病室に居るような気がする
母親の声が聞こえている
僕の名前を呼んでいるのか
僕は応えようとする
大丈夫…大丈夫…
大丈夫…なんでもない
口を動かしたい
聞こえているのだろうか
分からない
目の前が暗い
ぼやけた視界に母の顔が見える
母の顔が…