失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】



「わかる…?こんなパズルみたいな

すれ違い…まるで小説か映画…

違うのこれが私の現実だったの…

私はいとこが私を好きだということ

を結婚した後から知らされた」

母の声が次第に暗くなっていった

「そしてついにあの日が来たの

私の無惨な運命の幕開けの日がね」

僕はその声に寒気を覚えた

それほど母の声は恐怖に満ちていた

「…あれは私が大学を卒業した次の

日だった…いとこと彼が私の卒業

祝いをしてくれる約束だった…私は

浮かれていた…彼に逢えるから…

彼に人生の節目を祝ってもらえる…

とても楽しみで…ドキドキしていた

…洋風の居酒屋で大人みたいに飲ま

せてもらって…二人にこれからの事

を気分良く聞いてもらって…私は

彼がいつになく沈んでいるのを

気にも留めてなかった…いとこは

逆にいつもよりはしゃいでいるよう

だった」

母の声は話の内容に反比例して

鬼気迫るものに変わっていった

「しばらく飲むといとこはだんだん

朦朧とし始めたの…お酒は強かった

はずなのに変だわと…少し感じた

あの人はいとこを介抱していたけど

立てないくらいに酔って…とうとう

眠ってしまったの…私はそのとき

不謹慎にも嬉しかった…だって…

彼と二人で飲めるから…寝ている

いとこに彼は自分の肩を貸して私と

彼は少し話をした…そのうちに今度

は私に急に眠気が襲ってきた…彼は

"二人とも疲れているんだね"と言い

僕が送るから大丈夫と私に言って

くれた…その後すぐに…私は意識が

なくなった」









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