失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】





兄貴

いつものように支離滅裂で

いつものように要領を得ない

いつもの僕の話だ

僕が兄貴に告白した時も

あの人の病院に兄貴連れて行く時も

そして今も

なにも変わらないな

何も変わらない

愛してることが

一番変わらない

何も変わらない

変われない



でも



僕の答え

それしか見つからない

愛してることと

一緒に居れること

違うって知った

僕の答え

この道しかない

一筋の答え

あの日見た同じ風景

選ぶことの出来ない

ひとつしかない道

戻ることも立ち止まることも

許されない一本の道

それを運命と言ったよね

兄貴

僕はいまその答えを歩いてる





話しながら

ひとりでにまた

涙がこぼれていた

「…これは…リセット…なんだ」

なんだろう

この張り裂けそうな悲しみは

あはは

心がズタズタじゃないか





「……だ」

その時兄の絞り出すような声が

僕の耳に届いた

兄の声は嗚咽に震えていた

僕には一瞬それが幻聴に聞こえ

驚いて兄を見た

兄は茫然とした顔で

僕の足元を見つめていた












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