失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】




「俺の半分が…もぎ取られてい…く

どうしたら…どうしたらいい…

俺は…俺は…一体何をすれば…お前

を手放せる…?これ以上…何を…

何を選べば…許される…?」









心を殺しても

ダメだよ兄貴

きっと僕を幸せにしたいと

祈ったんでしょ…?

僕が兄貴の幸せを祈ったみたいに…

それは宇宙の完璧な力

間違いはないんだ

僕が心折れ力尽き神に祈るたび

宇宙は完璧に作動する

それは兄貴を癒し救う力なんだ

僕は奇跡に目を見張る

その流れの中にいる兄貴と僕

これは偶然なんかじゃない

今僕らは宇宙の胎動の中に育まれて

眠っている幼子

罪を赦し本当の愛に生きろと

日常という幻から

愛が支配する本当の世界へと

産み落とされる前夜

僕らは自分でも知らない自分に

向き合わされる

何度でも何度でも

本当の想いと頭で考えた正しさが

ふるいにかけられ選り分けられる

容赦なく…限りなく正確に

幼稚な予見は正され

妄想は木葉微塵

僕たちは真実に打ちのめされて

気づく

愛に

ただ愛に






「兄貴…明日一緒に行きたいところ

が…あるんだ…付き合って欲しいん

だけど…」





何度でも

僕は愛する人のために









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