失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
部活のあとヤツは僕に
ある計画を語って聞かせた
「オリジナルでホントはアレに出た
いんだよな…」
こ…誇大妄想だ
「アレって…もしや」
「そうだ…闘え!バンド・バトル
高校大会…に決まっておろう」
人気のバラエティ番組のスピンオフ
高校生バトルはロボットから俳句
クイズまで様々あるが
最近の人気アニメの影響などもあり
高校生バンドのトーナメントが
人気番組になっている
全国の音楽系部活のバンドが応募し
予選を勝ち進み優勝決定戦は
ゴールデンタイムで二時間番組
しかも全国放送
今年で4回目を迎え
高校バンドにおける
甲子園的な番組になっている
プロや音楽業界の人も見に来るので
優勝しなくても出場する価値はある
音楽をやりたいなら…だが
「オレはやりたいことは諦めない」
ヤツの自信は多分根拠はない
生まれつきなのだ
「お前…進路指導きたら"バンド"
って答えるつもりだな?」
「そのための布陣じゃねーか
物事は行動と実績とが評価されんだ
ぞ…お前なにもなくってただ口で
『音楽やりたいでーす』じゃ誰も
説得出来ねーよこの世界」
きた…コイツの妙に現実的な戦略
「行けるところまで行こうよ…今か
ら学歴は無理だ…リーマンが安泰な
世の中でもねーしな…パンクは
パンクを聞くのがパンクじゃない
パンクに生きる…これがパンクだ」
「…」