失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
兄と僕
いつもの真夜中の
逢い引きが始まる
兄は狭い部屋の二段ベッドの上に
こっそりとあがってくる
僕は布団の中に彼を迎え入れる
僕がまだ幼稚園に行く前から
僕たちはこんな風に夜を共にする
全部兄が教えてくれた
兄のすることに僕は逆らわない
そしてもう
やめられない
あまりに愛し合ってしまったから
僕は兄と
破滅したっていい
誰にも内緒の関係だけど
ただ一人
兄の父だけが
僕らの関係を知ってる
だって大元の原因は
そいつだから