失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
兄に見られたくない
知らない男達に無理矢理
ほどかれてしまった身体
でも…隠す気力もありはしない
「ああっ…あっ…あっ…」
「我慢…するな…苦しいから…」
同じ身体を持ってる兄は
全部わかっていた
「わからない…どうしていい…か」
兄は僕の身体に覆い被さった
「狂ってもいいんだ…俺がお前…
受けとめるから」
兄の身体の重みがすべて
快感に変換されていく
「んあああぁぁ…」
「大丈夫だ…大丈夫…お前は敏感だ
から感じやすいだけだ」
「違う…狂ってるんだ…あの日から
僕の身体…墜ちたんだ」
「敏感じゃなきゃそんなにならない
お前が自分を守ったんだ…苦痛で
気が狂わないように…身体に替わっ
てもらっただけだ」
兄は優しく僕を諭すように話した
「死にたくなるほど…辛い思いをし
たんだ…当たり前なんだよ」
僕は少しづつ思い出していった
そう…だ
あんまり苦しいから…僕は
気持ちよくしてって
願ったんだ
「そう…だね…僕は耐えきれなくて
せめて…気持ち良くして欲しいって
願ったんだ…」
兄は僕を抱きしめた
「だから…だめだ…まだこの身体を
心の替わりに狂わせておかないと…
お前のあの日のトラウマがまだ癒え
ないうちは狂っていていいんだ…で
ないとお前が本当に崩壊してしまう
から…」
あの残酷な体験から僕の心を
この身体が守ってくれていた…?
「狂って…求めてしまうんだよ…?
それでも…いいの…?」
「ああ…いいんだ…俺に求めて…
そのために…俺がいる…嫌なことは
だめだとすぐ言えよ…して欲しい事
は我慢しないで…全部ぶつけて」
だが僕の中の高まりは
ある異常な要求を密かに告げていた
なぜ…そこまで…ひどい…
見知らぬ誰かの言葉がよぎる
(この子は調教のしがいがある…)
止めて…
誰か僕を止めて…