失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
「だけど…もう…想像すら耐えられ
ない…お前とあの人が愛し合う姿な
んて…地獄だ…お前がまだ…あの人
を愛しているんだろうと…思えば思
うほど…焼けるような苦痛が胸を
ズタズタに切り裂いて…それしか考
えられなくなる…お前を支えるだけ
じゃ俺は満足しないのかよって…!
…ああ!そうだよ!ずっとずっと!
お前が欲しくて欲しくて仕方ないん
だよ!だからお前を普通の世界から
奪ったんだ…俺は!」
「じゃあ!責任取ってよ!」
僕はもう何がなんだか分からなく
なっていた
「そんなに自分を責めるなら…責め
ればいいじゃない!その代わり僕の
言うことを全部聞いてよ!兄貴が
罪を償うとか言うなら僕の言いなり
になってよ!わかったよ…もし僕の
未来がバラバラに崩壊するのが兄貴
のせいなら罰として全部見届けてよ
僕が破滅するのを僕と一緒に見届け
てよ!」
その言葉に兄は唖然としたまま
絶句した
だが僕も自分がいま言ったことが
自分で言ったこととは思えずに
その場で茫然と兄を見つめていた
「良い…考えだ…と思う…よ」
僕は自分の言ったことを
思い返しながらその提案を
もう一度繰り返した
「兄貴を…下さい…僕を壊した…罰
として…」
僕は心の底から願っていた
この不毛な‘罪と罰’の議論を
終・わ・ら・せ・た・い
今すぐ