失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】









叫ばないように前と同じ

タオルを口輪にされて

激しく責められる

殺されても…いい

このまま責め殺されたい

内臓を掻き回されて

押し潰され…引き出される

「俺の…ものだ…誰にも渡さない」

兄が囁く

頭の中が白くなる

「お前の中の…俺以外の爪痕を全部

消してやりたい…」

気が遠くなる

「あの人の痕跡も…なにもかも…」

兄が耳に舌を入れる

「んんんーっ!」

意識がスパークした

同時に噴射していた

「ここ…お前は小さい時から弱かっ

たな…音楽にぴったりの…敏感な…

あの人にも責めされたんだろう?」

兄はなぜか自分を追い詰めるような

際どいことを言った

「どうだった?あの人に責められて

こんな風にイッたのか…?」

およそ兄の言葉とは思えない嗜虐

「何をされたのか…見えるようだな

…俺の身体にそっくりになって…

俺の狂った身体に…」

突然兄は僕の肩口に噛みついた

「んぐっ!」

痛いっ…兄貴…

でも…身体は…逆

また疼いてくる

支配されているんだ

その夢のような切なさに

胸の奥がズキッと疼いた






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