失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
しばらくして僕らはようやく
立ち上がった
「一体誰がどれを書いたんだ?」
ヤツが息をきらしながら
みんなに聞いた
「オレはLOVEだ」
「お前がそれか!」
「じゃあ先輩はどれ?」
「あたしはKissですよ…Kissの
ファンだから…なんか文句ある?」
「じゃあ爆裂はどっち?」
僕だ…
「…」
「黙って手を挙げるな!」
「じゃあ必然的に天使はナヲさん」
「イエス!みんなに一人づつ天使の
名前つけますか?」
「オレは絶対ルシフェルだ!」
「言うと思った…」
というわけで
一も二もなく反論すらなく
何故か決まったバンド名
『LOVE天使爆裂Kiss』
漢字英語大文字小文字そのままで
僕たちの船に長い名前がついた
「うん…!良いね!」
ヤツはすっかり満足したようだった
「これからオレをルシフェルと呼ん
でくれ」
「LOVE堕天使になりませんか?」
「堕天使はお前だけで十分だし…あ
ダ天使の《ダ》は堕ちるじゃなくて
駄目の《駄》だからね」
駄天使…さすが先輩
駄菓子みたいだ
「駄目の駄って…どんな字だっけ」
ヤツの質問に答え
先輩が黒板に『駄天使』と
大きくチョークで書いた
「うわー!安いなこの天使!」
「我ながら良く出来たねっ」
ナヲさんが大笑いしていた
デモ締切まであと少し
しばらく毎日練習の日が続いた