失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
ある晴れた日に
その日は晴れていた
初夏の日差しがだんだん強くなる
今年は空梅雨なのか梅雨前線は弱く
僕らは高気圧の真下にいた
いつもの始業のベルがなる
僕たちは急いで席に着いた
いつもならばすぐに教科の先生が
テキストを抱えて教室に来るはずが
今日に限って5分経っても
やって来なかった
僕たちはざわざわしながら
長い休み時間を楽しんでいた
しばらくして教室のドアが開き
優雅な休み時間は終わりを告げた…
と誰もが思ったそのとき
そこにいたのは教科の先生ではなく
何故かクラス担任だった
「えー…静かに!」
担任はうるさい教室に呼び掛けた
「これから緊急会議がありますので
1限目自習になります!」
クラスのほとんどがおおーっと
喜びの声を上げた
担任は尚も続けた
「みんなちゃんと自習しろよ」
そして数学のプリントが配られた
担任はそれを見届けると
すぐに職員室に戻っていった
「なんかあったのかな?」
隣の席で同級生が噂している
「誰かうちの生徒がマズイことでも
したんじゃねぇの?」
誰もがなにも分からなかった
その意外な答えは
次の日の全体朝礼で
明らかにされることとなった