失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】




部活での慣れない聞き込みも虚しく

あまりたいした情報も獲られず

残りのメンバーは

ボーカル抜きの練習をした

「あいつが休みなんて明日雪が降る

わ」

と先輩はいつものように毒づいたが

駄天使とのコントが出来なくて

なんとなくつまんなそうだった

替わりにナヲさんが

ドラムを叩きながら歌ってくれたが

「目指せ森久美子!デスね」

上手かった…

先輩が言う

「ハモり入れたくなるな…あいつ

ハモって音取れるかな…?」

「メロだけを歌わせれば外れないと

思いますけど」





だが…それ以前の問題だ

ヤツはいつ立ち直れるのか

締め切りまであと一週間

ピンチはチャンスと言うけれど

マジでヤバくなってきた

メンバーにこの現状を

話せないもどかしさがつのる

明日は必ずヤツに会おう

どうなるか分からないけど

学校来るかな…

来なかったらヤツの自宅に行こう

会うんだ

苦しいだろうな…ヤツは

そっとしておいてやりたい気持ちが

僕をためらわせていた






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