失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
「いやさ…そしたらお前の気持ちが
伝わるだろ?…悩んでるって素直に
書いて…それでどんな返信が来るか
…もしくは来ないか…待ったら?」
「そっか…」
「どうするかはそれから考えれば」
兄の提案ににわかに希望が湧いた
「気がつかなかった…直接会うこと
に頭が固まってた」
「悩んでるときはそんなもんだ」
兄は笑った
「でも…そいつ…いいヤツだな
バンドのボーカルのヤツだろう?
お前の良く話してる…」
「ああ…そういえばバンド以外の話
兄貴にしてなかったかもね」
「うん…初めて聞いた…秘密の共感
…か…何か話したの?俺の事とか」
僕はぶるんぶるん首を横に振った
「まさか!」
「そうか…お前の友達はお前に手の
内見られちゃったんだな…」
兄は不思議なことを言った
「そりゃそうだけど」
「そうなるとお前も手持ちのカード
出さなきゃな」
「え?」
兄はにっこり微笑んで言った