失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
「ついに…起こってしまった」
お堂の出口の前のスペースに
僕たちは座り込んだ
外は明るくまぶしいはずなのに
現実感がなかった
「啓示だ…」
ヤツは遠い目になっていた
「あ~!マジ?マジ?」
先輩は多少パニック気味なのかも
「皆…心して良く聞くのだ」
ヤツはなにか神がかったような
へんなノリで皆に話し掛けた
「5人目は我々と共にいる…!」
「やめてー!」
先輩が叫んだ
「お化けじゃないんだってば!」
ヤツがとりなす
「ビックリしたんだよ!」
「神さまだぜ?」
「本当に出るなんて…いきなり来ら
れても驚くじゃん!」
「いや…いきなり行ったのは俺たち
だしむしろ」
「そりゃそうだけどさあ!」
「センパイ…とりあえずお茶飲んで
一息つきまショ~」
いつも何故か冷静な後輩のフォロー
なんか前に居た異国の地で
修羅場でもくぐってるんだろうか?
先輩のパニクりが収まってきた
日が落ちる前に鎖場を降りなければ
「そろそろ降りようか」
僕が提案するとみんなも同意した
「先輩…気をつけて降りてよ」
「わかってるわよ…もう大丈夫」
「行こうって最初に言ったの…」
「あーあーあー!そうですよ!私で
したよ!」
「一応覚えていらっしゃったんです
ね!…これで脳に大腸菌が入った件
相殺っすからね!」
「クソ~」
「早く降りてきて下さい!」
僕が割って入る
「仲が良くてイイデスネ!」
後輩が見上げながらニコニコしてる
いい子だなあ…といつも思う
恋してもいい
くらいなのに…