失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
(君が誰かを救いたいなら
君が神を感じている証拠だ
君の悲しみは神の慈悲
君の苦しみは神の目覚めの苦い薬
君の絶望は神の不在
君の喜びは神の愛
君は神といつも共にある
そして
君の祈りは神の救いだ…)
近…い?
もしかしてそれは
もっとそれは近くて
いつも共にあるもの
なのかな…?
僕は倍音の話が何故か
不良神父の話とかぶっているように
思えてならなかった
それは手に届かないものが
近くに
とても近くに来つつある何かの
予感のようなものを伴って…
はっきりとはわからない
言葉にはならない
まだ
だけど…
「…決勝…頑張れそう?」
顧問が申し訳なさげに
みんなに問い掛ける
「……」
ヤツは口を尖らせて
しかめっ面していた
「…あの」
僕は思わず顧問に聞いた
「…僕たちが癒せるんですか?
その…音楽で…僕たちにその力が
有るって…?」