失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
フィナーレ
最後のバンドが全て演奏を終えた
決勝のあまりのレベルの高さに
僕たちは唖然として
そのあと笑ってしまっていた
「ムリだねっ!」
先輩の明るい笑い声には
屈託のカケラもない
舞台はよどみなく結果発表へ向かう
表彰されるのはグランプリと
2位と3位
そして特別審査員の独断で選ばれる
特別審査員賞
つまり4校のみ
僕はもうすでにここまで来れた
そのことで満足していた
いやもう満足するしかないか…
とうとう3位から結果発表が始まる
「3位は…○○高校!《王様とその
家来》!」
『ハダカの王様』をモチーフにした
かなりコミカルでブラックな歌詞と
王様と家来のコスプレが超ウケた
会場誰しも納得のバンド
ボーカルの上手さが半端なくて
ヘビメタ…コンセプトの勝利だ
「3位がコレかよ…オレたちの勝ち
目なしだな」
隣でヤツが呟く
悔しいが実力が違い過ぎる
「2位を発表します!△△高校
《Dead-Loid》!」
キャーッと嬌声が上がる
今回多かった女の子バンドの実力派
美形ツインボーカルで
異常な完成度のハモりは
演奏中に拍手が起きたほどだった
歌詞は社会問題になってる
引きこもりの体験を元に書かれた
(どうやらボーカルの片方が中学の
時に不登校だったらしい)
舞台の上でみんな泣いていた
「グランプリの前に審査員特別賞の
発表です!」
今年の特別審査員が壇上に上がった