失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
「君んとこの兄さん…かっこいい
じゃん!彼女居るの?」
「いえ…いませんよ(彼氏しか)」
「むむむ!これはイケるかも~」
「そうすると僕は先輩をお姉さんと
呼ぶんですかね?」
「ゲッ!それはイマイチ想像出来な
いかも!」
先輩が僕の顔をマジマジと見る
「…何見てんですか」
「いや…あんま似てないなーと」
「ああ…えっと兄貴と僕は父親が
違うから」
「あっ…ゴメン」
先輩がマズった感満載な顔で謝る
「いや…別に気にしないで下さいよ
そんな」
それより後輩の滅多に見せない涙が
とても気になる
「兄貴ほめてたよ」
「ええ…ありがとうございマス…
嬉しいデス」
僕は単刀直入に尋ねた
「珍しく…泣いてたから…何でかな
って…聞いてもいいのかな?」
後輩は少し考えていた
「整理ついたら…話しマスネ」
「嫌なら…話さなくても良いから」
「ありがとうございマス…でも話し
た方が良い…のかもデス」
「はい!撤収だ!荷物持って!」
運営から呼び出されて帰ってきた
顧問が僕たちを急かしながら言った
「じゃあ…その話は後で聞かせて
欲しいな」
「ハイ…先輩…」
「ん?」
なにか言いたげな後輩が気になり
つつも僕たちは大勢の人混みと共に
会場の外に押し出されていった