失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
「あっ!ああ…俺だ俺…久しぶり
でもないか?」
親父は今日のことを彼に話していた
「替わって替わって!」
僕の声に気づいて親父が携帯を
僕によこした
「…あ…あの」
「お?久しぶりだな~元気か…今日
はおめでとう!」
「いやあの…お礼を言いたくて」
「いいんだよそんなの!まだあの
ギター使ってんのか?」
「はい…気に入ってます」
「そっかそっか!親父譲りで器用な
んだな…まあ器用だけじゃギターは
弾けねぇけどなっ!」
そういって彼は豪快に笑った
「とにかく…ありがとうございます
あの…指導が良かったと思います」
「あっはは!まあいいや…恩着せと
くぜ…テレビ見るからな…俺の指導
がどうなったか見てまた電話するわ
でもさ…せっかくなんだから
プロになっちゃえよ!」
久しぶりに話した
彼はプロになりたかったが
結局やれなかったと言っていた
プロになっちゃえよ
それは神のみぞ知るってヤツで…
その日の夜
後輩からメールがきた