失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】




『先輩、お疲れさまでした。今日は

本当にスペシャルな1日でした

ほんとは直接話さなきゃと思いまし

たが、うまく話せるかどうか自信が

ないのでメールですみません


私は前の学校でもバンドをしていま

した。でもそこで人間関係の問題が

あり、せっかく大会に出られるはず

だったのが、私のリーダーとしての

力不足で、結局バンドは解散してし

まいました。

そのショックを引きずりながら日本

に久しぶりに帰って来て、この高校

に入学して、でも私にはドラムしか

無くて、やっぱりこうやってバンド

の一員になってました。

隠してましたが、最初は部活がとて

も怖くて、やっぱり入らなければ良

かったと思うこともありました。

大会に出ると決まって、逃げたい気

持ちさえありましたが、でも今ここ

で止めたら、またあの空しい日々を

送るのかと思うと、それも出来ずに

苦しい日々が続きました。

でもあの日、駄天使先輩がなにか心

に大きな悲しみを背負いながらも

練習を続けていくのを見ているうち

に、私は自分の苦しいことより、

どうすれば先輩が前のように元気に

なってくれるかな…ということを

考えるようになっていました







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