失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】




それが彼女からのメールだった


あんなに明るくて

屈託のないあの笑顔の下に

そんな不安を隠していたなんて



気づいてあげられなかったんだ

僕は自分のこととヤツのことで

いっぱいいっぱいで

しかも気持ちの中であの明るさに

頼っていた




ショックだった

自分に軽く絶望した



そんな彼女をほったらかしに

してたのかと思うとゾッとした

言えなかったんだ

気づいてあげればもっと早く

気持ちを打ち明けてくれてたかも…



ごめん

ごめんね

先輩失格だね





そんなメールを書いた

送信ボタンを押すのに

勇気がいった


ごめんね






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