失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】

少し長めのアンコール





二学期が始まり

夏休みを境に僕らは

学内の有名人となっていた

そしてそういうのに付き物の

根も葉も無い噂…とか

クラスメートの反感…とか

学外のファンとか

部活内の嫉妬とかが現れては消え

それらはいつも予想の斜め上を行き

心に爆弾を投下していった



一番神経がすり減ったのは

先輩にストーカーみたいなのが憑き

これはかなり騒ぎになった

そして漫研の腐女子共に

恐ろしい同人誌を作られた

その後メディアの取材もあり

僕たちバンドメンバーの生活は

確実に夏休み前とは違っていた

けなされもしたが

褒められもした

それは幸せなのか不幸なのか

微妙によくわからない世界の変化で

それぞれの立場や起きた出来事は

違っていても

多かれ少なかれ皆がそれに翻弄され

自分が本当は何を望んでいるかを

独りきりで考えざるを得ない日々が

かなり長い間続いた




信じがたい早さで二学期が終わり

短い三学期が始まり

そんな三学期の終わりに

先輩は高校を卒業していった





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