失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】



ライブの日が来た



あの日不良神父は僕に言った

「またいつでも来たらいいよ。教会

は空いてるし…人はあまり来ないし

さ」

不良神父は泣いている僕に

泣いているわけも訊かず続けた

「君は祈り方を知ってるか?」

僕は首を横に振った

「讃美歌は祈りだ…苦しみから救わ

れる…想いを籠めてクリスマスに歌

うんだ。神は聞いてる…神だけは君

のこと全部知ってる…君の苦しみを

全部」




 この世の闇路を照らし給う
 妙なる光の
 主は来ませり
 主は来ませり
 主は主は来ませり!




闇を照らせ

光よ

牢を砕き

虜を放て



神がいるか

いないのか

僕に教えてくれ

いるんなら応えてよ!



僕は不良神父に尋ねた

神なんているのか?

神がいるかだって?

どっちがいい?

いるのと…いないのと

不良神父は変なことを言った

どっちがいいって…

どっちがいいんだよ…君は

神父は畳み掛けた

僕は!…僕は…いたほうが良いよ

いたほうがいい…けど

いいけど…いないんだろ?

神父は答えて言った

君がいたほうがいいと思うなら

いるさ

君は神を知ってるんだろ?

知らないヤツは

いたほうがいいなんて言わない




 しぼめる心の花を咲かせ
 恵みの露おく
 主は来ませり
 主は来ませり
 主は主は来ませり!




僕が神を知ってる?

そうさ

神が君を知ってるように

わかんないよ

君が誰かを救いたいと思っている

だから君は神を知ってる









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