失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
君が誰かを救いたいなら
君が神を感じている証拠だ
君の悲しみは神の慈悲
君の苦しみは神の目覚めの苦い薬
君の絶望は神の不在という妄想
君の喜びは神の愛
君は神といつも共にある
そして
君の祈りは神の救いだ
他にどうせ出来ることなんてない
幸いなことに
君は自分の無力を知ってる
だったらもっとデキるヤツに任す
神は君を助けたくてうずうずしてる
君はダメ元で祈れば良い
金はかからんし
どこか特別な場所に行く必要もない
ただそこで祈れ
やって失うものは何もないさ!
曲は最後に差し掛かった
平和の君なる御子を迎え
救いの主とぞ
ほめたたえよ
ほめたたえよ
ほめ、ほめたたえよ!
最後のギターのフレーズ
そしてエンディング
割れるような拍手と喝采
アンコールの拍手が続いた
そして…
そして…?
兄貴…
客席の一番後ろに
僕の目は釘付けにされた
そこには
そこにいるはずのない
兄の姿があった