失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
帰宅
兄は帰ってきた
クリスマスの次の日に
その夜に部屋で僕はあの
解放された日の兄の話を聴いた
だが僕には気になることがあった
あいつのこと
兄の父親のことだ
今あいつはどうなってるんだろう
それを兄に訊くのが怖かった
兄も僕には話さなかった
悪魔からは兄は解放されたが
あの卑怯者から兄はまだ束縛されて
心を鎖で繋がれているのだろうか
兄は僕には話さないつもりなのか…
心に刺さった棘のように
そのことは僕の中で疼いた