失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
僕はどちらかが迎えに来るまで
同じ階のロビーの脇にある
自販機とソファのある一角で
温かい缶で両手を暖めながら
中のミルクティをすすっていた
いま…触れてる…のかな
彼ら
あの日のことちゃんと確かめあって
早く本当のことがわかると良い
不意に涙が頬を伝った
兄が救われる
あの人も
それは
不思議で複雑な痛みと安堵だった
日が傾きかけて
窓の外が少しオレンジに変わってる
曇天の隙間から少しだけ見える西陽
僕は涙をぬぐいながら
ブラインドの隙間から見える
かすかな夕日を眺めていた
人は
ひとりぼっちだ
僕はいつの間にか
嫉妬の向こう側にいた