失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】



「俺がまだ小学生の頃…親父が別れ

た母に内緒で俺に会いに来てた…ク

スリをやってた…タチの悪い薄汚い

ゲイバーに通ってて…そういうパー

ティで俺はあいつの仲間からも…ま

わされてなぶられた…親父は人生を

投げていて…壊れかけていた…俺は

そんな親父を見捨てられずに言いな

りに繰り返し…そんな目にあわされ

てた…嫌なのに身体がだんだん狂っ

ていくのがわかって…俺はそれ

なしでは耐えられない身体になって

いった…多分嫌だから快楽で耐えて

るしかなくてそんな風に身体を馴ら

してしまって…俺はそれを…お前に

教えてしまった…俺がお前をこんな

にした…俺を救ってくれたのに…」



兄は僕を貪りながら

僕が初めて聞く過去を

告白し続けた



兄に貪られる

それは僕にも初めてのこと

兄はいつも僕に与えてくれてた

していることは同じ…なのに

これは…奪われてるんだ

これが奪われてる感覚

ああ…愛じゃない…

魔的な衝動につき動かされてる

兄はこれを…父親から…ずっと

兄が渇望を満たす分だけ

僕は奪い取られる


痛み

心が渇いてしまいそうな



う…

だけど



その時僕の身体にも

悪魔が入り込んでくるような

異様な快楽が襲ってきた

身体が反り返る

入っ…て…くる

僕は身体の中に生暖かい黒いモノが

押し入ってくるような

幻覚を見た気がした








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