失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
僕にとって音楽は唯一の発散だ
ハードコアなエレキギターの
凶暴な音を出している時だけ
頭の中が空っぽになる
きれいな音なんか出さない
何かを壊せるくらい凶暴な音
それが欲しい
ギターを持つと人が変わるねと
入部したての頃
部活のメンバーが驚いていた
普段はニコニコしてさあ
まるで気違いみたいな音出して
きっと破壊願望があるんだ
この世界が僕たちを
受け入れてはくれないなら…いっそ
壊してしまいたい
壊してしまえるなら
僕は…
僕は…
ただ苦しいんだ
自分すら救えないのかな
兄が心配で心配でならない
まるで兄の母親のようだ
きっとうちの母も苦しいんだろう
だから絶対に秘密なんだ
僕たちのことは