桜空2
「はいは〜い、ちょっと待って下さいねー」
竜賀さんはそう言うと氷水に浸けてあったタオルを絞り込んだ。
「姫様も…色々あるんですねぇ」
「えっ?」
いきなり竜賀さんがそんなことを言い出したのでびっくりしてしまった。
「……えぇ…なんか色々ありすぎて心が追いつかないっていうか…次から次へと色んなことが起きるから…ほんとよく分からなくて…」
私はイスに座ったまま俯いた。
「……江戸を…久喜家を背負っていくということは…確かにかなり大変だとは思いますよ。たくさんの人達の金や命を動かすのは将軍ですからね」
ふぅ、とため息をつき私にタオルを渡した竜賀さん。
「…………」
「しかしその中でも苦しいことばかりではありません。嬉しいことだってありますよ。姫様は江戸の次期将軍として今を精一杯頑張ればいいんですよ!!」
そう言うと竜賀さんはニコッと微笑んだ。
「そうだよね…ありがとう!!竜賀さん」
「どういたしまして。当たり前のことを申したまでです!!」
私は竜賀さんの部屋を出ると目にタオルを当てた。
ひんやりと冷たい……。
確かに竜賀さんの言う通りだよね
私はただ今を精一杯頑張ればいいんだ。
ただ、今を――…