桜空2
「それにしても遠い所からよくお越し下さいました、姫様。今日はごゆっくりして下さい」
「お気遣いありがとうございます。しかし私、多忙なもので江戸城の方にも仕事を残してきたので用事が済んだらおいとまさせて頂きます」
「そうですか、姫様もお忙しいのですね」
使用人は大変そうですね、そんな表情で私を見た。
そりゃあね。
少なくともあなたよりは苦労してるんじゃないかしら。
無言のまま、蓮華将軍が待つ部屋へとゆっくりと歩く。
「――ではここが殿様の待つ部屋になります。」
使用人は部屋の横に立つとそう説明した。
「――殿様、江戸城より桜姫様がお越しです」
使用人は中にいるであろう将軍に言った。
「入れ」
一言だけ返ってきた。
使用人は返事をすると扉を開けた。