俺様狼と子猫少女の秘密の時間②

でもそうは言っても、一度記憶が蘇ると思い出はけっこうあったのだ。


例えば、階段の二段目から落っこちたあたしをそばで見て泣いてた翔くんとか。

一緒に遊んだ後、別れ際に派手に転んだあたしに駆け寄って、泣いてた翔くんとか。

あたしが引っ越すときに、人形を落として汚してしまい泣いてるあたしの隣で、一緒に泣いていた翔くんとか。


「…あんたも大概ドジだけど、槙野泣いてばっかじゃんか」


「……あれ?」


で、でも実際そんな記憶ばっか…。

だからこそ、気付かなかったし驚いたんだ。


「さ、ホラ。もういいから、早くダーリンのとこ行ってきなさいな♪」


「だ、だーりん?」


そこは少し引っかかったが、あえて突っ込みはしなかった。


音楽室で授業のあったこの時間。

教室に戻る道中なのだ。

杏子より一足先に戻り、お弁当を持って屋上へ行くことにした。



「……あれ?」


屋上に着いたはいいけれど。

いつもいるはずの場所に、先輩がいない。


「あれー?」


おかしいな…。

待ってると思って急いだのに…まさか授業出たのかな?


「おい。なにやってんだ、変な顔して」


< 126 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop