俺様狼と子猫少女の秘密の時間②

――数時間後、すっかりへそを曲げたあたしは、むくれた表情のままキッチンに立っていた。

時折先輩のくすくす笑う声が聞こえて、それが余計に刺激してならない。


…塩の代わりにお砂糖入れてやろうかしら。



「せんぱーい? できましたよ」


最後の一つのお皿をテーブルにのせ、ソファに寝そべる先輩に声をかける。


「グラタンと野菜スープです…♪」


あたし……マカロニグラタン好きなの…❤

今日は自分の好みに合わせてしまいました…てへ。



怒っていたことなどすっかり忘れ、幸せ気分でグラタンを口にしたこのときは。

翔くんの“正体”が分かったからと、それで終わったわけではないということを忘れていた。



人の言葉に潜む、嘘と真実。

哀しい嘘の真実は、また、哀しいものだった。



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