俺様狼と子猫少女の秘密の時間②
だけれど、あたしの予想に反して、翔くんは「そう」と言っただけだった。
このごろ彼は少し変だ。
幼馴染みだったと分かってからこっち、前のようにからかってきたりということがない。
どうしたんだろう?
不思議には思うものの、そちらのほうがありがたいことはありがたい。
ぼーっと教科書を眺めながら、ただ時が経つのを待った。
……わあ。
化学じゃあん。理系って基本的にダメなんだよね。
まあ数学ほどじゃないけど。
――数時間後。
ようやく待ちに待った先輩に会いに行く時間……否、お昼の時間だ。
体育のあとの着替えが終わったばかりで、教室には女の子しかいない。
男の子が……翔くんが戻ってくる前に、さっさと行っちゃおう。
「杏子、あたし、もう行くね!」
別に言う必要はないのだが、なんとなく誰かに声をかけて行きたかった。
といっても、仲のいい友達といえば杏子くらいなものだ。
必然的に彼女に言わざるを得ないのだ。
「いってらっさーい」
間延びした杏子の返事に手を振って、スキップまじりに教室を出た。
なんだか…。
恋人のもとにいそいそと足しげく通う、平安時代の男の人みたいだ。
毎日毎日あたしってば…。