俺様狼と子猫少女の秘密の時間②

未だにぽかんと口を開けているあたしとは裏腹に、もごもごと口を動かす先輩。

その口に含まれているのは、ついさっきまであたしが咥えていたミニトマト。


あろうことか、口移しのようにぱくっとあたしから取ってしまったのだ。


「……」


驚くことさえままならない状態のあたしに、自分の分のトマトを押し込んでくる。


「むぐっ」


「そんなに好きだったんならやるよ」


はあ……。どうも…。

…あ、甘くておいしい。


…………いや違くない?


「んなななんてことしてくれるんですか!!」


「だから返しただろ。しかももう一つあるし」


あ、ほんとだ。

二個ずつ入れたんだよねーそういえば。

……ってだから違うでしょ!

ぶっちゃけトマトどうでもいいし!


「~~っも、もういいです!」


ぷくっと頬を膨らませて、そっぽを向いて続きを食べた。

たしかにいじけてしまったわけだが、それだけじゃない。

なにをされたか認識した瞬間に熱くなった顔を隠すために。



< 146 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop