俺様狼と子猫少女の秘密の時間②
十数分後、先輩のキス一つでけろりと機嫌を直したあたしはニッコニッコしながら教室への道のりを歩いていた。
あたしって単純だなあ…。
「……だから悪いけど…」
……んん?
「本当……なの? それ…。みんな嘘じゃないかって言ってるよ」
なんだろ……音楽室から?
なんでまたこんな中途半端な時間に…。
突如聞こえてきた会話に、つい足を止めてしまう。
「あははっ……残念だけど、本当だ」
聞き耳を立てるのはよくない、と、再び足を進めようとしたとき。
自嘲気味に笑う男の人の声に聞き覚えがあり、再び足を止めた。
「あ……」
し、翔くん!?
思わず声を上げそうになり、慌てて口元を押さえる。
翔くんは、ピアノに寄りかかり、女の子と向かい合っていた。
あの女の子……もしかして、翔くんのこと…?
いつの間にやら、あたしは中を覗くようにしていた。
「…じゃあ…誰なの?」
「まあ誰ってのは言えないけど…でも俺にとったら、誰より可愛い子だよ」
ま……。
か、可愛いって翔くんがそんなことを口にするなんて!
誰のことだろう…。