俺様狼と子猫少女の秘密の時間②

「…それに翔くんは大切なお友達……ていうか幼馴染みだし」


「んん?」


杏子のことが大事なのと同じ。

でも先輩のことが大事なのとも、ママや那智兄達が大事なのともまた違う。


“愛情”というものだけじゃない。

大切に思う心にも、それぞれ違うカタチがあるんだ。


「翔くんは……それでいいって言ってくれたんだ」


…そう。

昨日のたくさんのメール、着信の中に、一つだけ彼からのメールがあった。

そこには……



『悠由が俺のこと思ってくれてるならそれで充分。ありがとな』


そして。


『ごめんな。でももうちょっとだけ好きでいさせて~』


絵文字で、ごまかすように明るく振舞っていた。



「ちょっと思ったんだよね…あたし」


「え?」


翔くんはお母さんがいない。

たしか、彼が生まれてすぐお姉さんと一緒に出て行ったって聞いた。


「もしかして、あたしに気付いてほしかったのかな…なんて」


最初に会ったとき、翔くんはすぐに気付いたのに…あたしは何も知らなかった。

自分に気付いてほしかったのかなって、ちょっと思ったんだ。


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