Fall down
「優美っ…。落ち着いてくれ。
お願いだから、こんな…。」
どうしようもない現実は
ただ突きつけられていくだけ。
私にはどうすることも出来なくて
ただ、寂しいと。
言うしかなかった…。
私を抱きしめたままの
翔ちゃんは、辛そうな顔をして
何も言わずそばにいてくれた。
こんな悲劇はなぜ。
記憶をたどっても何も頭には
浮かんでこなかった。
一人で死んでいった拓ちゃんを
私はわすれる事も思い出に変える
こともできないまま、
もらった指輪を
ネックレスにしてつけていた。
白い雲の隙間から
光がさしてきて、
光で胸の指輪がひかっていた。
「…私は、まだ…。」
そう口走った私は
すべてを思い出していた。