黒い大きな犬
僕はそっと、彼に近付く。「早く傷を治さないと」
彼は少しだけ首を左右に振り、俯く。「もう、俺は、助からない。もうすぐ死ぬだろう」
僕は黙り込む。そしてほとんど反射的に、彼の頭に触れる。彼は目を閉じる。僕はやっと言葉を吐き出す。「あの時僕は、君を助けたかった」

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