黒い大きな犬
目がようやく闇にピントを合わせる。確かに、よく見ると右側のハムスターは左側に比べて毛ヅヤは悪く、弱々しかった。
「ウヒョ! そうだよお。オイラのとうちゃんさぁ。とうちゃんが、アンタにお願いがあるんだってさあ。ねぇねぇ?」
部屋を見回すと、相当荒れていた。まるで泥棒にでも入られた後のように。
「ウヒ…そうですじゃよ。あんたに頼みがあるですよ」
よろよろとしながら、父親ハムスターが狭い(彼等にとっては適当な広さなのだろう)部屋を歩き回る。
「ウヒ…この通り、部屋は荒れていますですよ」
僕は頷く。頼みって、なんだ?

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