紐
姑
女は姑が憎くて仕方が無かった。
この家に嫁いで来て十年、一時も心の休まる事が無かった。
今朝も些細な事でこってりと嫌味を言われた。
「もう沢山だわっ!」
女は洗い物の手を止め、拳を握りしめて天を仰いだ。
紐が見えた。彼女の頭上にぶら下がっている。
「何故こんな所に紐が・・・?」
女は不思議そうにそれを眺めた。
ふと掴んでみた。途端に電気が走ったようなシビレを手の平に感じた。
そして女は目の前に幻影を見た。誰かが花を活けている。
「華道教室に出掛けている義母だわ!」
義母の後ろに映っている時計も見える。
女は台所の時計を見た。針は同時刻を指している。
女の目は姑の首に注目した。紐が絡みついていた。
西部劇や何かで縛り首にあう囚人のそれのようにぐるりと一巻き。
女は慌てて手を放した。
目の前の映像がフッと消えた。