─侵食─悪魔のような男
「行くな…」
喉まででかかった言葉を呑み込んで、正也はお弁当を持ち最高の笑顔を見せた。
「弁当ありがとな!じゃ行ってきます」
「はいっ…行ってらっしゃい」
ユウリもまた満面の笑みを浮かべて正也を見送った。
「最後になるかなこの弁当も…」
車の助手席に乗せられたお弁当を横目に、正也は寂しげに微笑んでハンドルを握った。
遠ざかるユウリの姿をミラー越しに感じ、「元気でな…」とぽつりと呟いた。