─侵食─悪魔のような男

「…良かったのかこれで」



ユウリの出ていった方をぼんやり眺めていた咲に、不意に一也は話しかけた。



「なによ…何が言いたいの?」



ふっと口の端を上げた一也が話し始めた。



「あんたさぁ…あいつの事好きなんだろ…?」



「それがどうしたのよ…だからどうだって言うの…あんたに迷惑かかるの?」



「劉兒さんから引き離して…自分の目の届く所に隠してしまいたかった…違うか?」



「………」



正にその通りだった…咲は何も言えず黙って一也を睨み付けるしかできないでいた。
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