─侵食─悪魔のような男

「このまま市役所行ってくれ」



「はい、わかりました」



車に乗り込み運転手にそう告げると、劉兒はユウリの手を取り口づけた。



「逃げるなよ」



そう言って意地悪な笑みを浮かべる劉兒に、ユウリは微笑んだ。



「ふふっ…逃げたりなんてしないわよ」



「いや…女は恐い生き物だからな…わかんねえ」



「あたしが信用できないの?」



「そういう訳じゃねぇけど…もうお前を手放したくないからな」



劉兒は"ふっ"と少し寂しげに笑ってみせる。
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