◆ 空は飛べない



「もう会うのはやめにしよう」



私は22歳。

6歳年下の、彼は16歳で高校生。
彼はちらりと私を見た。



「おしまいにしようと思うの」



私がどれだけ破滅の言葉を紡いでも
彼は何も言わなかった。


初めから。

「どうして」と、彼が聞かないであろうことは分かっていた。


彼は高校生だけど、
それよりずっと大人で。

どこかで気持ちを割り切っているし
冷めている。


このあいだだって、

「ねえ、雛子さん」と
挑発的に見上げてきたかと思うと

「寂しいね」なんて言って

わけを聞いたら

「だって体を何度繋げてもさ、心は絶対に共有出来ないんだよ」


……そんなの。当然だ。

そうしたいものこそ、
そうはいかない。

彼はそれを知っていて、認めている。

私は知っていたけど
認めてなんかいなかった。

決して埋まらない距離を、少しでも縮めれば、それは……それは。

今冷静に考えれば、彼が一番正しい。

だって一体なんだって言うのだろう?
何になるって言うのだろう。

分からないから捨ててしまおうとしているのかもしれない。



< 2 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop