キミの名を呼ぶ
コーヒーの苦さが、今の俺には丁度いい。
舌に感じる温度は、徐々に俺の体を暖かくしていく。
「そんな事ないよ?私、嘘つくの嫌いだもん」
コトンとグラスを下ろしていう君は、俺から少しだけ目線をずらした。
君の不自然に揺れる瞳を黙って見つめる。
確実に君が嘘をついているって事、すぐに分かった。
いや、もうわかっていたと言うべきか・・。
俺は君から視線をずらしまたコーヒーを唇に当てた。
でも、そういう焦った君も悪くない。
君のその笑顔に隠れた顔を、そろそろ俺に見せてよ。
コーヒーへと向けていた視線を少しだけ上げて、俺はまた君に言葉を返す。
「へぇ、嫌いねぇー・・・じゃあ、どうしていつもお前が笑顔の理由、聞かせてくれる?」