キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
「来い…刹月花」

手を前に出すと重みが襲う。

目を開けて確認すると漆黒の鞘に入った日本刀があった。

鬼を殺すために造られた刀、刹月花<セツゲッカ>。

梓はその鞘を抜いて切っ先を椿に向けた。

「俺は鬼を狩る。 愛するなど・・・絶対にない」

「あなたは本当に何も覚えてないのね そんなことで私を殺せるかしら」

不敵な笑みを浮かべながら挑発するように言う椿。

その意味がよく分からなかったのだが、深く考えることなく梓は椿に向かって地面を蹴った時だった。

《梓、後退!!》

急に身体が言うことを聞かなくなり、その言葉通りに後ろへ下がる。

その声と同時に目の前を横切る何か。

横切ったそれは、木に刺さった途端に爆発した。

「梓、大丈夫!?」

「っ、京華!! なんで・・・」

突然現れた京華を見て驚いていると、風を切る音が聴こえた。

認識した途端、今度は金属が擦れ合う高い音が響いた。

「今はっ! そんなこと気にしてる場合じゃないデショ?」

「玲!! ・・・そうだな」

梓は玲を一瞥すると、椿に向き直った。

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