キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
鬱金香~白~
周りの木々よりも一回りも二回りも大きな木の下には頭にツノを生やし、緋色の羽織りを着た少女が座っている。

まるで何かを待っているかのように。

「桜、ご苦労様です」

「椿様っ! お帰りなさい!!」

桜<サクラ>と呼ばれた少女は椿の姿を見て立ち上がった。

「ご神木は変わりないようね」

「はい! 人間はこの木の存在は知りませんから」

そう言いながら桜は神木を見上げた。

神木は木の葉を風に揺らして鈴のような綺麗な音を立てる。

「・・・椿様、目が赤く腫れております 泣かれたのですか?」

「え、ええ。 少しね 梓に逢えたから」

「あの梓様ですか?!! 今っどこに!!」

「・・サク、梓様は我等の知る梓様ではなかったのだ 分かるな?」

これ以上、この話をするな

槐が目でそれを訴えている。

桜は首を縦に振って答えた。

・・・二人に気を使わせちゃったわね

椿は二人のやり取りを苦笑いしながら見る。

「二人ともよく聞きなさい」

真剣な声音で言う椿に、槐と桜は向き直る。

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