キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
「じゃあお前らはそこで待ってろ」

「えっ 入っちゃだめ?」

手伝いをしたいと京華が続けて言うので、梓は溜め息を漏らしながら言った。

「この蔵は鬼を狩り続けた一族しか入れないんだ 分かるな?」
つまり、玲と京華は鬼狩りの一族ではないため入れないということだ。

そう言われたら諦めがついたのか、入りたいと騒いでいた二人は静かになった。

「梓、俺十秒以上は待てねぇから」


真剣な顔で言う玲に少しだけ殺意が芽生えた気がする。

梓はそれを無視してさっさと蔵に入ってしまった。

「うわ、ツッコミなしとかどんまい」

「あれっ目から汁が」

・・・あいつら馬鹿だな

そんなことを思いながら、ランプで辺りを照らす。

埃まみれで居心地が悪い。
目的の物を探してさっさと出よう。

梓は埃の積もった箱を開けたり、達筆すぎて読めない題が書いてある本をどける。

なかなか見付からないので溜め息をつきながら棚を見上げると、目に入ったのは金の装飾が施された黒い箱。

多分、あれだ。

梓は箱に手を伸ばしたが、あと少しのところで届かない。

・・・悔しいな

「・・・よっ!」

勢いよく背伸びをして箱を掴み、一気に引き抜く。

よし、取れた!!

そう思ったその瞬間、頭に勢いよくたくさんの巻物や本が襲い掛かってきた。

何だよめちゃくちゃ痛ぇ・・・



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