キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
床の間には寒椿の掛け軸。

障子を開ければそこに広がるのは枯れることのない、万年桜が生えている。

そんな居間に梓を上座にして座る京華と玲。

梓は黒い箱に手をかけ、ゆっくりとその蓋を開けた。

「・・・まず、京華から」

「はっはい!!」

空気が張り詰める中、緊張しながら京華が返事をした。

・・・そんなに緊張しなくてもいいんだが・・まぁいいや

箱の中から取り出したのは、普段良くみるのより一回り大きな扇子だった。

「京華 お前にはこの薫風をやる」

「くんぷう? その扇子の名前?」

京華は受け取りながら薫風<クンプウ>を眺める。

水晶の様に透き通る骨組みをゆっくりと開くと、鮮やかな青のグラデーションが目を奪った。

「うわ、綺麗・・・!」

「それは術者の力を高める性質がある。 あと、大きさも変えられるらしいが・・・ まぁ、使えば分かる」

そう言って、玲に向き直る梓。

玲はドキリと心臓を鳴らしながら梓を見た。

「つ、次は俺だな!」

「・・お前は、これ」

箱から取り出したのは、布に包まれた細長いもの。

ゆっくりとその布を剥がすと出てきたのは水晶のように透き通った剥き出しの刃だった。

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