キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
梓は忙しなく家に入り、神棚のお酒を手にとってまた万年桜に向かう。
万年桜の巫ではないから桜の声が聴こえないかもしれない。
だが母の血を半分は引き継いでいるから希望はある。
梓は深呼吸をして、口を開いた。
「聞こし召しませ万年桜・・・」
お酒を万年桜の周りに撒いてその場に跪く。
どうかあなたの見たことを教えてください・・・
心の中でつぶやき、しばらく待つ。
だが、桜の声は聴こえない。
髪が肩から流れ落ちるばかりだ。
やっぱり無理だったか・・
立ち上がって溜め息をつきながら髪を掻き上げ、諦めかけた時だった。
『やっと新しい巫来よったか ・・・って覡<ゲキ>かいな! ワシは男は嫌いなんに』
「・・・おぉ」
桜の花びらのような淡い色の着流しを着て、薄い桃色の髪を腰の辺りで結った若い男が、眉間にシワを寄せながら梓を見ている。
思わず感嘆していると、大きな溜め息が目の前から聴こえた。
『まったく咲は何考えてんねや・・・ ほれそこの、名前くらいは一応聞いたるわ』
「・・梓、だ あんたは?」
未だ溜め息を止めない万年桜に苛立ちを覚えつつ名乗ると、あからさまに嫌そうな顔をした。
万年桜の巫ではないから桜の声が聴こえないかもしれない。
だが母の血を半分は引き継いでいるから希望はある。
梓は深呼吸をして、口を開いた。
「聞こし召しませ万年桜・・・」
お酒を万年桜の周りに撒いてその場に跪く。
どうかあなたの見たことを教えてください・・・
心の中でつぶやき、しばらく待つ。
だが、桜の声は聴こえない。
髪が肩から流れ落ちるばかりだ。
やっぱり無理だったか・・
立ち上がって溜め息をつきながら髪を掻き上げ、諦めかけた時だった。
『やっと新しい巫来よったか ・・・って覡<ゲキ>かいな! ワシは男は嫌いなんに』
「・・・おぉ」
桜の花びらのような淡い色の着流しを着て、薄い桃色の髪を腰の辺りで結った若い男が、眉間にシワを寄せながら梓を見ている。
思わず感嘆していると、大きな溜め息が目の前から聴こえた。
『まったく咲は何考えてんねや・・・ ほれそこの、名前くらいは一応聞いたるわ』
「・・梓、だ あんたは?」
未だ溜め息を止めない万年桜に苛立ちを覚えつつ名乗ると、あからさまに嫌そうな顔をした。