キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
見上げると、月影のまぶしい笑顔が目に入った。

『まぁ人間は煩悩の塊なんやから、安心せい!』

「安心できねぇよ はぁ、人間なんてなるもんじゃねぇな」

『・・覚えてるん? あのこと』

「は? 何言ってんだ」

『いや、こっちの話。』

そういうと、月影は右手を高くあげた。

すると桜の花びらが梓を包み込んだ。

「な、何する気だ!!」

『ワシが知ってるものだけ見せたる これは全部ホントのことやで』

「な、ちょ まっ・・・!!!」

月影が視界から消えていく。

手を伸ばすが、彼の着流しを掴む前に梓は桜の花びらに飲まれた。
















誰かが笑っている、どこかで聞いたことのある声が聴こえる。

・・あぁ、そうだ。


夢で見た女の声だ。

梓は桜の花びらの舞う中、声がするほうへ向かうと・・・






いた。彼女だ。




茶色の混じった髪を横で一つに結んで、頬を桜色に染めながら笑っている。

・・・あれ、どこかで見たことあるような・・・?




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